外  科

各 診 療 分 野 の 紹 介 ( 外 科 )

▼ 乳    腺

  •  乳癌は年々増加し、女性の癌罹患数第1位となっています。2006年より乳腺専門医である轟木医長が主に診療に当たって参りましたが、現在3名の専門医のもと年間約100例の乳癌手術を行っております。
     乳癌に対する治療は局所制御するための外科療法と放射線療法、および病態に応じた薬物療法(化学療法、分子標的治療、ホルモン療法)を組み合わせることが必要で、高い専門性が求められます。手術は、術前画像検査や生検により癌の広がりや性質を診断して術式を決定しています。画像診断に関して、2018年10月より80列MDCT、および高い空間分解能の拡散強調像が撮像可能なMRI装置が導入されております。放射線療法についても、2019年2月より強度変調放射線治療(IMRT)も可能な最新のリニアック装置導入によって、より精緻な放射線療法が可能となっております。薬物療法は、ホルモン受容体発現、HER2発現、増殖能(Ki-67)などの生物学的特性などを基にして、日本乳癌学会の乳癌診療ガイドラインのみならず、アメリカのNCCNガイドラインなど最新の情報に沿って行っています。乳癌の化学療法は効果が高い反面、強い副作用が出る場合も多数みられます。化学療法が安全に施行できるように、がん化学療法看護認定看護師を外来化学療法室に配置するなど、きめ細やかに対応しております。
     また、日本遺伝性乳癌卵巣癌総合診療制度機構が、2018年4月から開始した施設認定事業において当院は九州で2ヶ所のみの基幹施設に認定されました。乳癌の5~10%を占める遺伝性乳癌症例やご家族、更には遺伝性腫瘍をご心配される方々に対する遺伝カウンセリング や遺伝学的検査などへの取り組みも強化し、北九州市内の乳腺専門施設からのご相談にも応じております。

▼ 上 部 消 化 管

  • 食道、胃、十二指腸疾患を中心とした上部消化管の外科的治療を行っています。

悪性疾患

  • 上部消化管の悪性疾患としては食道がん、胃がん、十二指腸がん等が挙げられます。
    がんの進行度や全身状態を考慮し、内視鏡的切除、腹腔鏡下手術、開腹手術を選択して行っています。
    また、術後補助化学療法も行っています。
    切除不能がんや再発がんに対しても、病状に応じて化学療法や放射線治療による治療を他科と協力して行っています。



粘膜下腫瘍

  • GIST等の粘膜下腫瘍に対し、外科的切除を行っています。がんと同様に腹腔鏡下手術や補助化学療法を行っています。

急性腹症

  • 胃潰瘍穿孔や十二指腸潰瘍穿孔などの消化管穿孔や内ヘルニア嵌頓などによる急性腹症に対し、麻酔科協力の下、緊急手術等の対応を行っています。 受診時の病状にもよりますが、腹腔鏡下での手術や、単孔式手術も行っています。

良性疾患

  • 横隔膜ヘルニア(食道裂孔ヘルニアやMorgagni孔ヘルニア、外傷性など)や食道アカラシア、傍十二指腸ヘルニア等の内ヘルニアに対し手術を行っています。  病状により腹腔鏡下での手術や単孔式手術を行っています。

▼ 下 部 消 化 管

  • 下部消化管に含まれるのは、大腸・小腸・肛門です。
    ・小腸は基本的に悪性疾患が少なく、腸閉塞などほとんどが内科的治療で治る疾患です。
     しかし、内科的治療が無効の場合や、外傷や急激に病状が進行する疾患などは手術の適応となります
     (腸閉塞症など)。
    ・当科で担当する大腸の疾患の多くは大腸癌(結腸がん・直腸がん)です。全国的に腹腔鏡下手術(低侵襲
     手術)が増加していますが、当院でも積極的に行っています。検査の段階から消化器内科と密に連携し、
     がんの進行度や全身状態を考慮して治療方針を選択します。手術の際には、術前に得られた検査結果を十
     分に生かした手術計画を立てます

    CTを用いた病変と周囲血管との位置関係の確認


     必要に応じて術前・術後に化学療法を行うこともあります。切除不能と判断されたがんに対しては、
    化学療法だけでなく放射線科医による放射線療法も併せて行うこともあります。
    ・痔核(いぼ痔)、痔瘻(あな痔)、裂肛(切れ痔)などの肛門疾患や、直腸脱なども治療しています。
    ・急性虫垂炎、消化管穿孔、腸閉塞症などの腹部救急疾患も、可能な限り対応しています。全身状態にも
     よりますが、これらの良性救急疾患に対しても、麻酔科協力の下、積極的に腹腔鏡下手術を行うように
     しています。
 

▼ 肝    臓

  • 当院には肝臓の病気を専門とする放射線科医、肝臓内科医、肝臓外科医から構成される肝臓病センターが あり肝疾患の治療にあたっています。 特に肝細胞から発生する肝細胞癌の治療法には手術、ラジオ波焼灼治療、肝動脈化学塞栓療法、薬物療法などがあり、個々の患者さんにとっての最適な治療方針を決定していますが、 最も確実に癌を除去する治療法は外科的切除です。 手術による治療が望ましいと考えられた患者さんを外科で担当しています。
    肝臓に入る血管には門脈と肝動脈の2種類があり、肝細胞癌はこのうち門脈の流れに沿って広がっていく特徴があるため、稀にその領域に微小転移が存在することがあります。 肝細胞癌とそれに関係する門脈の走行を見定めて切除することが勧められており、このような手術を系統的肝切除といいます。当科では系統的肝切除を標準術式としています。
    肝細胞癌以外にも胆管細胞癌、大腸癌などの転移性肝癌などの悪性腫瘍や症状を有する巨大な血管腫などの良性疾患なども肝切除の対象となります。

▼ 胆嚢・胆管・膵臓

  • 当科では 胆石症、胆管結石症、胆のう・胆管炎、胆嚢ポリープ、慢性膵炎、膵石症などの良性疾患、 胆道癌(胆のう癌、胆管癌、十二指腸乳頭部癌)、膵癌などの悪性疾患に対する治療を行っています。

胆石症 / 胆のう炎

胆石症に対して腹腔鏡下胆嚢摘出術を行っています

  • 胆石症に対して腹腔鏡下胆嚢摘出術を行っています。 これはおなかに4ヶ所小さな穴を開けその穴からカメラや手術器具をいれて胆嚢を摘出する手術です。 傷が小さいため手術後の痛みも軽く早期に社会復帰が可能です。 胆嚢の炎症が軽い症例ではおへその部分を2cmほど切開して、この1ヶ所の傷だけで手術を行う単孔式の腹腔鏡下胆嚢摘出術も行っています。 一方、胆のう炎を合併している場合にはその程度に応じて抗生物質による治療や胆嚢ドレナージ(胆嚢に細いチューブを挿入し胆嚢内の膿や胆汁を外に出す処置)を行った後に手術を行っています。

胆管結石症 / 胆管炎

当院では この胆管結石症に対して手術ではなく内視鏡治療(カメラを飲んで行う治療)を主に行っています

  • 胆管とは肝臓でつくられた胆汁が十二指腸に流れていく通り道です。 ここに結石ができると黄疸(皮膚や白目が黄色くなる、尿が褐色になる)、肝機能異常、胆管炎や膵炎(腹痛や発熱を伴うことがある)など色々な症状が出現します。 当院では、この胆管結石症に対して手術ではなく内視鏡治療(カメラを飲んで行う治療)を主に行っています。 内視鏡をつかって十二指腸にある胆管の出口(十二指腸乳頭)を切開して広げます。 広げた後に石を胆管の中から取り除きます。 治療には数回の内視鏡が必要なことが多いですが手術をせずに治癒するため痛みや体への負担も少ない治療です。 この治療を行う際には痛み止めと鎮静剤を使用して行いますので寝ているうちに治療が終了することが多いです。 このほかに必要がある場合には胆管ドレナージ(胆管に細いチューブを挿入し胆嚢内の膿や胆汁を外に出す処置)を行うこともあります。

胆嚢ポリープ

当院では 血液検査、エコー、CT、MRIなどの精密検査が可能です

  • 胆嚢のポリープには治療の必要が少ない良性のものから癌までさまざまなものがあります。 当院では血液検査、エコー、CT、MRIなどの精密検査が可能です。 これらの検査を行い手術が必要かどうかを判断しています。 良性と考えられる場合には手術は行わずに経過をみていきます。 悪性の疑いがある場合でも可能であれば傷が小さな腹腔鏡での手術を行っています。

慢性膵炎 / 膵石症

当科では 内視鏡を用いて膵管内にステントというチューブを留置して症状を改善させる治療を行っています

  • 慢性膵炎や膵石症(膵臓に結石ができる病気)は強い痛みを伴う場合があり外科的な治療が必要なことがあります。 当科ではこのような症例に対して内視鏡を用いて膵管内にステントというチューブを留置して症状を改善させる治療を行っています。 また、内視鏡での治療が困難な症例には膵管と小腸をつなぐ手術(膵管空腸吻合術)も行っています。

悪 性 疾 患

膵がん / 胆道がん の外科治療

膵がんの外科治療

  • 手術の対象となる膵臓の悪性疾患には膵臓がん、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)の一部、粘液産生膵腫瘍(MCN)などがあります。 膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)の一部や粘液産生膵腫瘍(MCN)は内部に癌が合併していたり将来的に癌になるため治療が必要な疾患です。 手術が必要なものかどうかはいろいろな精密検査の結果から判断します。 病状を正確に診断するためにエコー、CT、MRI、内視鏡下胆管・膵管造影、超音波内視鏡、胆汁・膵液細胞診などの精密検査を用いています。 その結果を十分に検討し的確に治療方針を決定しています。 膵臓の手術は難易度が高く大出血や重篤な合併症が生じることがあります。 当院では複数の専門医による出血の少ない安全で確実な手術を心掛けています。 当院で膵がんに対して行っている主な手術は亜全胃温存膵頭十二指腸切除術、膵体尾部切除術です。
  • 亜全胃温存膵頭十二指腸切除術

  • 膵臓は膵頭部、膵体部、膵尾部の3つに分けられますが主に膵頭部にできた癌に対して行う手術です。 おなかの外科手術の中でも最も大きく難しい手術の1つです。膵頭部と十二指腸、下部胆管、胆嚢を一塊に切除します。 残った胃、上部胆管、膵体尾部と小腸をつなぎます。膵頭部の背中側には門脈という大きな血管があります。 膵がんはこの血管に広がることがしばしばあり、その場合には癌が広がっている門脈の合併切除再建も行っています。 当院での手術では出血が少なく輸血を必要としない場合が多いです。
  • 膵体尾部切除術

  • 膵体部、膵尾部にできた癌にたいして行います。 膵臓の体尾部と脾臓を切除します。この手術ではほとんど輸血は必要としません。 手術後には癌の再発を抑えるために抗癌剤の治療を半年間行っています。 また、再発が見られた場合にも抗癌剤治療を行っています。
  • その他にも膵頭部癌による黄疸に対しては内視鏡をもちいて黄疸を解除するステント留置治療や黄疸の原因である胆汁を体外に出してあげる穿刺胆汁ドレナージ治療、 手術による胆管バイパス手術も行っています。

胆道がんの外科治療

  • この領域の主な悪性疾患には胆管癌、十二指腸乳頭部癌、胆のう癌があります。 これらの疾患は確定診断、手術術式選択、実際の手術手技すべてが難しく専門性が要求されます。 病状を正確に診断するためにエコー、CT、MRI、内視鏡下胆管・膵管造影、超音波内視鏡、胆汁胞診などの精密検査を用いています。 その結果を十分に検討し的確に治療方針を決定しています。 これらの疾患に対する手術は胆管切除術、肝切除術、亜全胃温存膵頭十二指腸切除術など難易度が高いものが多いですが複数の専門医で出血の少ない安全で確実な手術を心掛けています。 進行した癌に対しては手術前の門脈塞栓療法なども併用して癌の完治を目指しています。 手術後の再発予防目的や再発時の抗癌剤治療も行っています。
  • 中下部胆管癌

  • 胆汁の通り道である胆管に発生する癌です。肝機能異常や黄疸で発見されることが多いです。 このような場合にはまず胆汁の流れを良くするために内視鏡を用いてステントというチューブを胆管に留置して治療を行います。 この治療で肝機能異常や黄疸が改善した後に手術を行います。手術の術式は癌の広がりや患者さんの体力を総合的に判断して決定します。 通常は亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を行う場合が多いですが胆管切除のみ行う場合もあります。亜全胃温存膵頭十二指腸切除術はおなかの手術の中でも大きく難しい手術の1つです。 膵頭部と十二指腸、下部胆管、胆嚢を一塊に切除します。 残った胃、上部胆管、膵体尾部と小腸をつなぎます。大出血や重篤な合併症と隣り合わせの手術ですが、 当院では複数の専門医による出血の少ない安全で確実な手術を心掛けています(肝内胆管癌や肝門部胆管癌の外科治療については肝臓癌の項目をご参照ください)。
  • 十二指腸乳頭部癌

  • 胆汁や膵液が十二指腸に流れ出てくる部分を十二指腸乳頭といいます。 この部分にできる癌が十二指腸乳頭部癌です。この癌も肝機能異常や黄疸で発見されることが多いです。 その他に無症状でも内視鏡検査で見つかる場合もあります。基本的な治療は中下部胆管癌と同じです。
  • 胆のう癌

  • 胆のうは胆管の途中にある胆汁を貯める袋です。卵くらいの大きさで肝臓にぶら下がっています。 胆のうの癌は無症状でエコーやCT検査で見つかる場合が多いです。 進行すると黄疸などの症状が出現します。 早期の場合はおなかに数ヶ所1cm前後の穴を開けて行う腹腔鏡手術のみで完治する場合があります。 進行すれば肝切除や胆管切除などが必要になります。

がんによって起こる黄疸に対する治療

  • 肝臓で作られた胆汁(黄色の消化液)は胆管を通って十二指腸に流れていきます。 膵臓癌や胆道癌(胆管癌、十二指腸乳頭部癌)にかかると胆汁の通り道である胆管が塞がれ、胆汁が血液中に流入するため皮膚や眼球が黄色くなり黄疸が起こります。 このような黄疸は胆管の閉塞が原因で起こるため閉塞性黄疸といいます。 黄疸を伴った癌の治療ではまず、黄疸を改善させることが大切です。 閉塞性黄疸の治療法としては、内視鏡を用いて胆汁を十二指腸に誘導する方法(内ろう化)とエコーを用いて胆嚢や胆管に細いチューブを留置し、 胆汁を体外に誘導する方法(外ろう化)があります。 最近は内視鏡を用いた内ろう化を行うことが増えてきています。
  • 内視鏡を用いる方法(内ろう化)

  • 患者さんに口からカメラを飲んでもらい、カメラを十二指腸の胆汁の出口である乳頭部まで進めます。 十二指腸乳頭部を小さく切開(EST:乳頭括約筋切開術)した後に閉塞部にストローのようなステントチューブを留置する方法とメタリックステント(金属ステント)を留置して胆管を広げる方法があります。 この治療を行うことで胆汁が腸に流れるようにします(内ろう化)。 チューブステントは内径が比較的狭いため詰まる可能性がありますが、詰まった場合でも入れ替えることが可能です。 メタリックステントは内径が大きいため比較的長期間持ちますが、入れ替えが出来ないため一旦詰まるとステント内にもう一本ステントを留置する必要があります。
  • 内視鏡を用いて胆管内に金属ステント(矢印)を留置
    内視鏡を用いて胆管内に
    金属ステント(矢印)を留置

    エコーを用いる方法(外ろう化)

  • 内視鏡でステントが留置できない場合や、胃の手術を以前行った患者さんでは、十二指腸までカメラが届かないことがあります。 この場合、エコーを用いた方法で治療を行います。 これはエコーで見ながら肝臓内の胆管や胆嚢に針を刺しチューブを胆管内(胆嚢内)に留置する方法です。 留置したチューブを通って胆汁を体外に出してあげます(外ろう化)。 この方法では胆汁を貯めるためのバッグ(一日300mlから500ml位)を下げておかねばならず、入浴などが制限されるのが欠点です。 一旦チューブを留置した後に閉塞部にメタリックステントを留置することも可能です。 メタリックステントを留置できれば胆汁は腸に流れるためチューブやバッグが不要となります。
  • 内視鏡を用いて胆管内に金属ステント(矢印)を留置
    エコーを用いて胆管内に
    チューブ(矢印)を留置

▼ その他(ヘルニアなど)

  • 鼠経ヘルニア、大腿ヘルニア、腹壁瘢痕ヘルニアなどに対する手術を行っています。 最近ではメッシュ(クーゲルパッチなど)を用いた、張力のかからない修復術が行われるようになり、 痛みが少なく入院期間も短縮され、社会復帰が可能となっています。
  • ヘルニアは保存的な治療では治りませんので立った時や腹部に力を入れた時に、 鼠径部(足の付け根)に膨らみがでたり痛みがある場合にはご相談ください。
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